では、〈技〉や〈守破離〉などという職人のような考えは心理臨床の世界ではまかり通らぬ、時代にあった考えではないという人達には、どのように応答すればよいのでしょうか。また、異なる意見としてサービス業として、顧客の満足度をどのように得るのか。あるいは、顧客のニーズに沿っているかの妥当性をどのように得るのか。たとえ、論理的な妥当性がユーザーの「個」を切り捨ててしまうとしても、ニーズに沿っているかという合目的的な妥当性をどのような基準や方法で得るのかという問いかけには、どのように応答すればよいのでしょうか。
こういった、アウトカム(ユーザーからの評価)とそのアウトカムがどのようにサービスの向上にフィードバック(ユーザーからの異議申し立てと関係者の賛同を含めた合意形成/コンセンサスを得ながら協働的な実践を目指す為のユーザーの反応の反映)されるのかという点は考察すべき課題と考えられます。
個人的には、〈エビデンス(普遍性)〉は、臨床の理論が論理的に適切かという「論理的な妥当性」と、臨床の理論に基づいた研究方法(デザイン)が適切かという「研究方法的な妥当性」があると考えられます。また、〈エビデンスに基づく実践(個別性)〉は、サービスがユーザーのニーズという目的に沿っているかという「合目的的な妥当性」と、サービスが現在提供している方法が効果を得ているのかという「方法的な妥当性」があるのではと考えています。言うまでもなく〈エビデンスを基づく実践〉を実施するには、対象を具体的な標的に絞ることや、標的の変化を数値として記録し、その変化をユーザーと検討する必要があると考えられます。
その時に大切な事は、ユーザーと一緒に適切な方法を実験的に試してみる、その結果を話し合いながら、ある程度の効果や合目的的性を得られるように修正していく事だといえます。とはいえ、サービスを提供する側の責任として、サービス全体をどうデザインするかという事は臨床家が考えなくてはならないといえます。