枠組みの階層性

区切り(パンクチュエーション)と意味づけ

 私たちは、目の前に起こる事象のつながりを、自分の視点から区切る(句読点を打つ=パンクチュエーションする)ことで、起きていることを理解しているとみることができます。この時、事象や事物を意味づける(概念化、枠組み、参照枠、認知する)ことで理解し、その理解を言葉にして、何かを思考したり、他者とのコミュニケーションに使ったりしています。そして、事象に対して、これは〇〇だと意味づける何かしらのフレーム(前提、概念、枠組み、参照枠、認知など)を持っていて、そのフレームを通して事象(外界)を把握していると考えることができます。


第一志向と第二志向

 私たちは言葉を使って思考やコミュニケーションをしています。言葉を使う中で、直接の体験からなる概念(第一志向)だけでなく、概念の概念(第二志向)といった直接の体験から離れた概念にも頼っています。

 しかし、普段これらを区別して使うことはありません。それは、直接の体験からなる概念(第一志向)と、間接的な体験からなる概念の概念(第二志向)を、いちいち区別していたら円滑な思考やコミュニケーションが阻害されてしまうからです。私たちは、普段から何気なく、実際に観察可能な目の前で起きた事象を、何かしら意味づけて理解しています。それを言葉にして、自分の内で思考したり、他者と言葉を介してコミュニケーションしています(実際には言語コミュニケーションだけでなく非言語コミュニケーション、あるいはコミュニケーション〔コンテンツ〕とメタ・コミュニケーション〔コンテクスト〕のセットになります)。


概念(枠組み)と階層性

 こうした意味づけられた概念(枠組み)は、実際に起きた事象、人間間のコミュニケーションでいうなら観察可能な行動の連鎖(つながり)に対して、階層性を持ってみることができます。例えるなら、行動の連鎖(つながり)の骨組みに、概念(枠組み)が肉づけされているといえます。そして、肉づけされている概念(枠組み)は階層性を持っていて、直接の体験に近い下位の概念から、実際の事象や直接の体験とは離れた「あの人は〇〇だ」、「私は〇〇だ」というような上位の概念が積み重なっているとみなすことができます。しかし、この上位の概念は、その人にとっては真実のように感じられることが多いと考えられます。私たちは、このように事象(行動の連鎖のような出来事の一連の流れ)に対して、階層的な概念(例えば、上位・中位・下位というような階層性を持った概念のネットワーク)を持っているとみなす事ができます(図「コミュニケーション相互作用の枠組み階層図」を参照)。

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事象と概念(枠組み)を区別する

 以上のように考えると、実際に起きた事象を把握しようとするなら、事象とその人が意味づけた概念(枠組み)を区別する必要があります。そこで最初の第一志向と第二志向の区別が重要となってくるのです。事象を把握するには、自分の目で観察するのがより正確ですが、そうでない場合は言葉による報告(語りや話し)に頼るしかありません。そうなると、聞き手は話し手の報告(語りや話し)から、実際に起きた事象と概念(枠組み)を区別して、〇〇ということが起きて、それをこの人は◎◎と理解しているんだなと翻訳する必要があります。その時に、直接の体験からの概念の方がより事象に対してより正確で、直接の体験から離れるほど不正確になるという原則は重要だと考えられます。