『月ぬ走いや、馬ぬ走い』の断片

1. 島尻・ケンドリック・浩輔、おばあ、かなちゃん 2. 兵隊さん、母親、赤ん坊 3. 愛衣子、ゆみ、伊志嶺、周、えーみー、粧裕、ヒガジュン 4. 島尻大尉、菜嘉原上等兵、黒島兵曹長 5. 中学生、黒島奈都紀の幽霊 6. 島尻妹、ケンドリック、魂込めの少女 7. 我…

脱学習とシステム/トランス

人間は、言葉が物にならないので、その代わりに心をつくった。心は区別し、定位によって、注意の方向性をつくりだす。そして、あたかも「私」が判断をしているかのような錯覚、目的と方法、原因と結果を見誤る。主客が分離をした主観の世界以前に戻るには「…

責任と応答

人間の精神や心理を考える上で、言語と時間は外せないと思う。そして、人間の精神や心理に関するの理論(仮説)が、法律や政治の問題で起こる事象と重なるところがあるのは何か?と考えている。例を上げると、デリダの免疫と自己免疫は、政治的な問題から考…

〈赦すこと〉についての(覚書きとして)

はじめに この世界で起こる支配、差別、災害、戦争、生老病死、あらゆる理不尽な暴力を〈赦すこと〉は難しい。また暴力は、個人、集団、国家、というあらゆる水準でおこる。よって〈赦すこと〉を規定することも難しい。しかし、〈赦すこと〉を措定しない限り…

思惟本性と思惟作用:魂・精神・意識

☆デカルトの有名な命題はリアルって何やねん!って、思っている我はリアルやから、ほなそこからリアル始めよか!って、ことなんだろうか? →「方法序説」はフランス語で書かれたので、人口に膾炙しているラテン語は訳者によるものらしい。この辺りは、「方法…

傷の交錯配列:家族・社会・国家にさらされた傷

【引用①】 傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷のまわりをそっとなぞること。身体全体をいたわること。ひきつれや瘢痕を抱え、包むこと。さらなる傷を負わないよう、手当てをし、好奇の目からは隠し、それでも恥じないこと。傷とともにその後を生きつづ…

言語と会話

【本文】 いくつかの要素の相互作用の連なりのひとまとまりをシステムとみなす認識論は、家族療法の歴史の中で発展していきました。はじめは、家族を全体としてみなし、つぎに家族は恒常性を持ったシステムであるとみなし、そこに一般システム論やサイバネテ…

何を心として認めるか︰心を定義することの難しさについての試論

心とは何かを定義する難しさ 人間の心(心理)とは何かについて述べることはとても難しいです。魂、霊、精神、意識、記憶、意志、主体、心身など、心と同じように使われる言葉はありますが、どれも、その言葉が指すもの(概念の内容や機能)は何かと言われれ…

可傷性=傷つきやすさ/顔=言説

他者は傷つきやすさを持った存在であると同時に、私もまた傷つきやすさを持った存在である。他者を傷つけてしてしまう可能性がある時、私もまた傷ついてしまう可能性がある。互いに、可傷性を持っている。 そして、他者の顔は言説を持ち、声として語りかける…

主体性と行為者性と主観的体験

哲学の本を読んでいると、なんだか主体性の賦活という言葉を安易に使えなくなってしまう。回復の主体はする側からされる側に移行⇄融合しながら、される側がする側になって自らの自然を回復、あるいは新たな自然を学習していくという過程については、今も同じ…

観察に関するスクリプト

自分が小さかった頃のことを覚えていますか。自分が好きになったものをどのように見ていたかを、はじめて見たものにどのように関心を向けていたかを、それは今とは違う感覚かもしれませんが、かつて、小さかった頃は当たり前の感覚で、忘れているだけのこと…

痛みに関するスクリプト

あなたがこうやって、私の声に耳を傾けてくれていることを、嬉しく思います。もし、あなたが今座っているなら、立ち上がって、もし、あたが今立ち上がっているなら、椅子をみつけてゆっくり座ってください。 そして、大きく息を吐いて、ゆっくり呼吸をしなが…

赦すことについて③

許すことをしたいのに赦せないことや、一度赦したはずなのに許せない思いや感覚に襲われること、これらは個人の決意だけでどうにかなるものではないように思います。赦すことは、その人が安全な状況で、適度な関係を誰かや何かと持ちながら、自らのアイデン…

赦すことについて②

たとえ、心の底から赦すことを望んでいても、自分ではどうしても許せないことがあると思います。この場合の赦すとは、相手や事件を無罪放免にするとか、加害されたことを不問にすることではありません。言葉で表すことができない体験に関わることなので、そ…

アイデンティティと同一性

アイデンティティは、安心と不安の振り子を行きつ戻りつしながら、恐怖、傷つきや恥の体験を濾過し、出来事としての体験を自らの経験として包み込みながら螺旋的に展開していく。そうだとしたら、アイデンティティは揺らぎそのもので、非アイデンティティ(…

土地と血縁、個人と世論と国家

澱が鎮む海、生命が腐敗し、発酵した土、鉱物から栄養を得る原生植物、土を耕すミミズ、花粉を運ぶミツバチ、種を散種する鳥、空、雲、雨、雷、火、風、光を浴びて、私たちは、この土地に生まれ立っている。新しく生まれてきた命を祝福し、死んでいった命を…

赦すことについて①

たとえ、一度でも赦せたとしても、再び怒りや恐怖が蘇り、身体が反応して、観念に縛られて、赦せなくなることはおかしなことでは無い。むしろ、人間的な当然の反応だといえるし、一度赦せた体験が偽りだったとは考えなくてもよい。有限な人間が、際限なく赦…

赦すことについての長い言い訳

暴力を振るったものを許すことが出来なくても、自分自身がその暴力から解放されること、この世界で安寧を感じられることは赦して欲しい。それは、赦すことも、回復することも、自分自身が選べること、自分自身が選べないことと選べることを見極められること…

コンテクストを活用した見立て

1. 語り手の語る現象を時系列(現象前、現象中、現象への対応、対応後、などの時間軸の区切りを設定する)で捉えなおし、事実として何が起きたのかを見立てる。 2. 現象はどのような状況で、どのように始まり、どれくらいの量と質で、どのように終わったのか…

無縁仏、個の記憶、種の記憶、物質

墓地の一角に、無縁仏となった墓石が一箇所に集められ、円心状に積み重ねられている。もはや、ひとつの塔のようだ。いや、巨大な墓石といった方がよいのだろうか。とにかく、不思議な存在感がある。無縁仏は、墓を管理する人がいなくなり、縁が途切れてしま…

小さな祈りから

言葉を蒔いて、芽が出るのを待つ。どれくらい待つのかは分からない、花が咲くかは分からない。途中で、枯れてしまうこともあるだろう。誰にも気づかれないかもしれない。それでも、いつかはと信じて、祈ることしかできない。何かを信じることとは、不確実で…

分断される世界で

人を助けるというと、心優しいけれど傷ついて困難な状態にある人を助けると思う場合が多いかもしれないけれど、社会の役割や仕事として人を助ける場合は、誰かを傷つけたり悪い事をしている人を助ける事もある。だから、好き嫌いではなく社会の制度として人…

言葉の本性

人間の精神にとっての現在が、過去と未来に分かれていくように、言葉の働きも、意味する働きと表現する働きに分かれていく。人間から生まれた言葉という道具は文字を生み、話すことと書くことに分かれていった。まるで、人間の精神の持つ本性を模倣するかの…

世界と他者、そして分有と共感

世界がここにあると信じている人たちと違い、世界を疑っている私の振る舞いは、どこかよそよそしく、常に何かに追われているようだった。どこか落ち着きのない、安心できない気分に覆われて、他者がずっと遠くに感じたり、自分がここにいるという感覚が希薄…

若い頃の失敗、死の不安を忙殺で追いやること。

生き物が死ぬと知った時、私は怖くててたまらなかった。自分の存在がこの世界から無くなるとはどういことか、幼い心で考えても答えは出るはずもなく、それ以来、死という不安に襲われては泣いてしまう日々が続いた。いつか死んでしまうのに、何故生まれてく…

夕方の友人達

冬の空、鳥が沖へ飛んでいく海岸線の防波堤の上を歩いている。外側にはテトラポットの波しぶきに海藻が揺れている。内側には釣人やランナーのための歩道がまだ新しい。波が打ちつけられ、砂が吹きさらされる。眩しいと感じたら、もう夕方だった。 友人に呼び…

生きる綻び―モーメント、再会

歳をとると、意識が遠隔的になっていくような気がしている。若い時は近接的な未来や人間関係に意識を向けているが、年老いていく時は子より孫へ、隣人より離れた人へと、遠隔的に意識を向けているように感じる。もちろん、三世代くらいの間隔、一度は行った…

解離に間接的に与えられたものについての試論

本文 ひとまず解離を意識が狭窄した特殊な注意状態と定義する事が可能かもしれない。そしてシモンドンの系統発生と特異性、ドゥルーズの潜在的/現働的を考慮して意識を考えるならば、自我境界自体が内部/外部を知覚する器官となり、そこに自我/対象備給が…

ドゥルーズの非人間主義

範疇(カテゴリー)と階層(ヒエラルキー)を峻別すること。しかし、それらが交錯することもある。そして、それらは接続(série)・連接(在立)・離接(出来事)する。それは、プレローマ(力と衝突)とクレァトゥーラ(差異)の交錯ともいえるし、意識と言…

近い未来の来訪者と遠い未来の来訪者

人間は誰しも未来のイメージを持っている。おそらく、この先こうなっているであろう…といった未来のイメージを前提として、「今、ここ」で起きている出来事に注意(関心)を向けて、外界を知覚し、状況を理解し、情報を選択しながら行動している。こうした個…