対話について思うこと⑤

はじめに これまでの①から④までで、対話の前提や条件としての、対等な関係、安全な場所、違いを受け入れる、に関することと、対話がどのようなものかについてのイメージを書いてみました。今回はこれらを書きながら考えた、対話で起きていることに関する仮説…

対話について思うこと④

はじめに ③では、立場によって見え方が違ってくること、私たちは言葉のルールや構造に従って思考していること、個体からの視点だけでなく関係からの視点でも起きていることを捉えてみること、立場の違いが何かを生み出すこと、が書きたかったのですが、伝わ…

対話について思うこと③

はじめに ③では、オープンダイアローグで大切にされている「本人のいない所でその人の話をしない」ということから、それが単なるルールではなく、対等な関係で話し合うことや、安全に話せる場所についての知恵だということを書いてみました。もちろん、「本…

対話について思うこと②

はじめに ①では、対話とは対話自体が目的で、呼吸のように対話をしていること自体が対話の前提であり、それが当たり前のことで対話していることを忘れてしまえるほど対話ができるような状況が条件だということを文章にしてみました。とはいえ、これだけでは…

対話について思うこと①

はじめに ここ数年で、対話という言葉をよく目や耳にするようになった気がします。それは、多様性が意識されるようになったからなのか、それとも過ごしてきた時代や場所・立場や意見の違いを理解し合うためなのか、そういうことが求められているだろうかと考…

共感について思うこと

とかく何かと同じであることが良しとされ、同じように感じていることが求められているように感じています。だからなのか、共感という言葉が安売りされて、多様性という言葉のように本来の意味とは異なって使われているように感じます。そして、このようなこ…

夢の中で言葉が話せるのはなぜか?

はじめに 素朴な疑問として、「夢の中で言葉が話せるのはなぜか?」を考えてみると、当たり前のようで当たり前でないことに気づきます。それは、夢の中にいる時、意識は眠りについて無意識※1の状態だとしたら、言葉を話しているのは無意識なのか意識なのか、…

【リテラシーの反省】

テクストを読まずに、自分の思い込みの意見や感想を述べない。 個人的な価値観やイデオロギーが湧き上がり、距離が置けそうにない場合は、意見や感想を控える。 テクストの文脈は、その当時から見た評価、現代から見た評価、継続的な時間経過から見た評価。…

対話と言葉

誰かと対話をする時に、相手の話しを全て理解してしまおうとするのではなく、常に理解の途上に留まりながら相手の話を聴く姿勢と、相手のユニークさに関心を向けて支配的な言説に隠れたローカルな知を掘り起こそうとする態度は、未だなかった理解や対話の可…

枠組みの階層性

区切り(パンクチュエーション)と意味づけ 私たちは、目の前に起こる事象のつながりを、自分の視点から区切る(句読点を打つ=パンクチュエーションする)ことで、起きていることを理解しているとみることができます。この時、事象や事物を意味づける(概念…

定位、方向性、注意

結局は、それも私自身の説明モデル(認識論)でしかない。誰もが、世界とは〇〇であるとか、私は〇〇をしているだろうとか、前提や未来のイメージを持っていて大体それに近い現実に着地する。それは因果論ではなく、外界への定位と、意識や注意と方向性(オ…

〈技〉と〈守破離〉に対しての批判についての検討

では、〈技〉や〈守破離〉などという職人のような考えは心理臨床の世界ではまかり通らぬ、時代にあった考えではないという人達には、どのように応答すればよいのでしょうか。また、異なる意見としてサービス業として、顧客の満足度をどのように得るのか。あ…

〈守破離〉の世界

守破離は、グレゴリー・ベイトソンの学習理論でいうならば、守が学習Ⅰ、破が学習Ⅱ、離が学習Ⅲにあたると考えられそうです。基本は学習Ⅰと学習Ⅱの繰り返しで、その中で稀に学習Ⅲ(システムそのものの脱学習と再学習)が起こるくらいのものだと考えます。学習Ⅲは…

問い

1. 直接的な経験から離れるほどに、捻じれ反転していくものがあのだろうか? 2. 不当を訴えるつもりが、まるで相手のやり方を真似るように相手を疎外し、その結果、自分自身を疎外してしまうのは何故か? 3. 親密性を築くつもりが、相手の立場を貶め、悪意の…

〈技〉を育む

技術というものは、普及すれば当たり前になって消えていく、そして慣習や制度に取り込まれ、通例として執り行われる。しかし、単なる技術ではなく匠の〈技〉というのは、相手の、自分の資質を伸ばしたり、組み合わせたり、そうした工夫であって、制度化でき…

研究ノートのようなもの

はじめに 上田勝久さんという方が書かれた『個人心理療法再考』という、心理療法の臨床家に向けて書かれた本があります。この本の内容は日本の心理臨床で、個人心理療法を十全に機能させユーザー側のニーズに合致した支援をする為の工夫を論じています。その…

〈土地〉と〈政治〉と〈友愛〉の系譜学

ポリス市民は、〈土地〉(そこで生まれるもの、食物や物質だけでなく歴史や言語といった歴史学や地質学のようなものも含めて)と〈民主制〉(これは政治的なものだけなくアーレントのいう活動のようなものではと考えています、しかしポリスには奴隷制度や女…

〈私〉の論理学

「魂が宿る」、「魂が抜けた」という表現はあるのに「意識が宿る」、「意識が抜けた」という表現は違和感を感じてしまう。それは、意識が存在することは当然で、宿ったり、抜けたりするものではない、という感覚があるからだろうか。それとも、意識は常に同…

〈セラピー/カウンセリング〉の〈再定義/再構成〉

人間が人間に対して提供されるセラピー/カウンセリング(支援・援助・相談・ケア・治療)といったことについて考えると、再定義/再構成が重要性を持っているように考えられます。 それは個人の持っている枠組み/参照枠/認知(フレーム)やその前提となる…

〈運命〉と〈贈与〉

私とは過去と未来の切断面として現れた「邂逅」の場である。どうしようもない偶然と、この私である必然に、苦悩し、抗い、受け入れながら、「邂逅」の場で生成と消滅のあいだで賽の一振りに賭(命懸)ける。それは、世界への信頼、あるいは「愛」なのかもし…

言葉にとって文字とはなにか

言葉は沈黙しているあいだに思考する 意味を伝えるために示されるものと 表われる意味以外のものに示されるもの 言葉によって話されるものと 文字によって書かれたものの あいだで類似が記憶を再生し 再生した記憶が類似を知覚し 再構成された知覚は紐づけさ…

歴史、物質、系譜

ヘーゲルの歴史観(段階)、マルクスの唯物論(構造)、ニーチェの系譜学(展開)があり、西洋史の同一性ではないものをとらえようとするベンヤミンやアドルノ、西洋史の批判としてハイデガーやアーレントが現れて、それ自体もロゴス中心主義だとデリダが謂…

ハイデガーは何を隠したのか?

永遠なるテクストがあるのだろうか?と考えれば考えるほど、否定の応答と、如何にその見方が人間中心的かということしか浮かんでこない。 むしろ、ハイデガーは書かれたテクストより、テクストの中に書かなかったものの方が意味があるのかもしれない。神学と…

『月ぬ走いや、馬ぬ走い』の断片

1. 島尻・ケンドリック・浩輔、おばあ、かなちゃん 2. 兵隊さん、母親、赤ん坊 3. 愛衣子、ゆみ、伊志嶺、周、えーみー、粧裕、ヒガジュン 4. 島尻大尉、菜嘉原上等兵、黒島兵曹長 5. 中学生、黒島奈都紀の幽霊 6. 島尻妹、ケンドリック、魂込めの少女 7. 我…

脱学習とシステム/トランス

人間は、言葉が物にならないので、その代わりに心をつくった。心は区別し、定位によって、注意の方向性をつくりだす。そして、あたかも「私」が判断をしているかのような錯覚、目的と方法、原因と結果を見誤る。主客が分離をした主観の世界以前に戻るには「…

責任と応答

人間の精神や心理を考える上で、言語と時間は外せないと思う。そして、人間の精神や心理に関するの理論(仮説)が、法律や政治の問題で起こる事象と重なるところがあるのは何か?と考えている。例を上げると、デリダの免疫と自己免疫は、政治的な問題から考…

〈赦すこと〉についての(覚書きとして)

はじめに この世界で起こる支配、差別、災害、戦争、生老病死、あらゆる理不尽な暴力を〈赦すこと〉は難しい。また暴力は、個人、集団、国家、というあらゆる水準でおこる。よって〈赦すこと〉を規定することも難しい。しかし、〈赦すこと〉を措定しない限り…

思惟本性と思惟作用:魂・精神・意識

☆デカルトの有名な命題はリアルって何やねん!って、思っている我はリアルやから、ほなそこからリアル始めよか!って、ことなんだろうか? →「方法序説」はフランス語で書かれたので、人口に膾炙しているラテン語は訳者によるものらしい。この辺りは、「方法…

傷の交錯配列:家族・社会・国家にさらされた傷

【引用①】 傷がそこにあることを認め、受け入れ、傷のまわりをそっとなぞること。身体全体をいたわること。ひきつれや瘢痕を抱え、包むこと。さらなる傷を負わないよう、手当てをし、好奇の目からは隠し、それでも恥じないこと。傷とともにその後を生きつづ…

言語と会話

【本文】 いくつかの要素の相互作用の連なりのひとまとまりをシステムとみなす認識論は、家族療法の歴史の中で発展していきました。はじめは、家族を全体としてみなし、つぎに家族は恒常性を持ったシステムであるとみなし、そこに一般システム論やサイバネテ…